花粉症は、スギやヒノキなどの植物の花粉が原因となって、くしゃみや鼻汁・鼻づまりなどのアレルギー症状をおこす病気です。現在、日本人の約20~30%が花粉症だといわれ国民病になっています。
- 症状
- 主な症状は、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみです。
くしゃみ、鼻水、鼻詰まりなどはアレルギー性鼻炎(鼻アレルギー)の症状で、花粉の飛散時期に一致して症状がおこるため、季節性アレルギー性鼻炎ともいわれます。一方、通年性アレルギー性鼻炎はダニによることが多いです。目のかゆみや流涙などはアレルギー性結膜炎の症状であり、鼻炎同様に季節性アレルギー性結膜炎ともいわれます。
原因となる花粉
春先に大量に飛散するスギ花粉によるスギ花粉症がもっとも有名です。ヒノキはスギと交差抗原性があり7~8割の方はヒノキ花粉にも反応するといわれます。
その他、原因となる花粉の植物にはさまざまなものがありますが、地域により原因植物の種類や飛散時期が異なっています。
加古川や東播磨地域では、草木植物では、カモガヤなどのイネ科植物、ブタクサ、ヨモギなどが多いようです。その他、ギシギシ、ヒメガマ(コガマ)、ススキ、カナムグラ、セイタカアワダチソウ(アキノキリンソウ)の花粉症もあります。
本木植物では、六甲山にオオバヤシャブシがたくさん植林されており、六甲山近くにお住まい方にはこの花粉症の方が多いようです。オオバヤシャブシは、シラカンバ(北海道などに多い)と類似するハンノキ属の植物で、当院ではハンノキとして検査しています。また、メロン・モモ・キウイ・リンゴなどの口腔アレルギー症候群を合併している方もおられます。その他、ウメ、クリ、コナラなども花粉症の原因となります。
花粉症の治療
- (1)花粉対策
- 花粉の飛散情報などを参考に、マスクやメガネ、衣類、外出や帰宅時、換気や掃除、布団や洗濯ものなど、花粉対策をしましょう。
- (2)薬物治療
- 鼻汁や鼻閉には抗ヒスタミン作用のある抗アレルギー薬がよく使われています。最近は眠気やだるさ、認知機能の低下などの副作用がほとんどないお薬もあります。お子様の場合、脳への移行の多い抗ヒスタミン薬は熱性けいれんをおこしやすくすることも知られていますので、当院ではなるべく非鎮静性の抗ヒスタミン薬を使用するようにしています。また、鼻噴霧用ステロイド薬も有効です。ロイコトリエン受容体拮抗薬などのお薬や漢方を併用することもあります。 目の充血やかゆみには抗アレルギー薬の点眼が有効です。
花粉症の症状のひどい方は、花粉がとびはじめる少し前から、ご自分に合ったお薬を、花粉シーズン中は継続して服用することが大切です。
花粉症の治療は「初期療法」が有効です。これは、花粉が飛び始める1週間前をめどに、症状が出る前からお薬の服用を開始します。このような治療により症状が出る時期を遅らせ、花粉シーズン中のつらい症状を軽くし、また、症状の終了を早めることができます。使用されるお薬は、例年の症状(くしゃみ・鼻水・鼻づまり・目の症状など)の程度などによって異なりますが、症状が軽くなったからといって花粉シーズン途中でお薬をやめてしまうと症状がひどくなることがありますので、花粉シーズン中は服用し続けることが大切です。
口腔アレルギー症候群
花粉症の方が生の果物や生野菜を食べた後、数分以内に唇、舌、口の中や喉にかゆみやしびれ、むくみなどがあらわれることがあります。これは、花粉症をひきおこす花粉特異的IgEと果物生野菜などとの交差反応が原因です。先行して感作された花粉抗原との交差反応によって生じる食物アレルギーは、花粉-食物アレルギー症候群(PFAS)といわれています。これらの交差抗原は消化によって抗原性を失いやすく、摂取直後の口腔咽頭症状だけで終わることが多い特徴から狭義の口腔アレルギー症候群(OAS)とも呼ばれています。これらの抗原は熱に弱いものが多いので加熱処理したものであれば、食べられることが多いのも特徴です。
花粉症との合併
シラカンバやオオバヤシャブシの花粉症患者・・・20%
スギ花粉症患者・・・7~17%
カバノキ科花粉(オオバヤシャブシ、ハンノキ)はバラ科果物(リンゴ、モモ、サクランボなど)やマメ科(豆乳など)など、イネ科花粉(オオアワガエリ、カモガヤ)はウリ科果物(メロン、スイカなど)、キク科花粉(ブタクサ、ヨモギ)はセリ科(セロリ、クミンなどの香辛料)、スギはナス科(トマト)など、花粉と食物との関連性が明らかになっています。
- スギ花粉症に対する舌下免疫療法
スギ花粉症に対する治療にアレルゲン免疫療法があります。スギ花粉のエキスを少量から投与することで、体をスギ花粉に慣らし、アレルギー症状を和らげる治療法です。 以前は免疫療法としては皮下注射の治療しかありませんでしたが、最近は舌下免疫療法といって、舌の下にスギエキスの錠剤や液体を投与し1分間(液体は2分間)保持した後に飲み込む治療が広まってきています。これは、毎日服用しないといけませんが痛みがなく自宅でできるというメリットがあります。毎日1日1回内服し、治療は3~5年続けます。治療の開始は、スギ花粉の飛散時期は開始できないので、6月から12月に開始します。約7~8割の方は効果が期待できます。 お子様でも、5歳以上でスギ花粉症の診断が確定しており、1分間舌下錠の保持ができるようであれば治療は可能です。小さなときからスギに対する免疫療法をしておくことは将来的なことを考えると意義のあることだと考えています。
保険適応にて治療できますので、ご希望の方は、お気軽にご相談ください。